はじめに¶
本書は3Dプリントガイドであって、CADを使って設計っぽいことをやっているが、やっていることはお絵描きであり設計ではない。 設計は本書のテーマではないがAIを使った設計支援について検討する。
設計支援AIについて¶
ここで紹介する「設計支援AI」は、次の機能をもつAIエージェントである。
- 設計者の知識を学習
- 設計の提案や改善案を生成する
- わからないことは、わからないという
この「設計支援AI」は、設計者の知識を学習し、それを用いて設計の提案や改善案を生成する。また、わからないことは、わからないと応えることで、設計者に知識の追加や整理を促す。
AIがハルシネーション(Hallucination)や、出典不明な怪しい知識にもとづいた回答の生成を防ぐ。
これらをOpt-out(オプトアウト)したAIを用いることで実現する。つまりクラウド型生成AIには設計者の知識を学習させないようにする。
設計支援AIの構築の流れ¶
設計情報をAIに学習させ、実践で使ってみる。よい応答が得られなければチューニングをする。
graph TD
A[知識の整理] --> B[学習];
B[学習] --> C[AIの応答の判定];
C[AIの応答の判定] --> A[知識の整理];
知識の整理¶
例として、水深5mにある直径1000mmの取水口を塞ぐための水防蓋を設計する。
Geminiに依頼した結果(冒頭を抜粋)は次の通りであった。 計算した上で、材質や設置方法(吊り環)、撤去時のエアー抜きバルブ等も提案してくれた。

物理や材料力学の教科書を調べて検算すれば、このまま設計できそうである。
とは言え、計算ミスはないか、考慮漏れはないか等の不安は拭えない。
知識として欲しいのは「水深5mにある800mの取水口はSS400の厚み16mmで耐久した実績」である。 計算・理論だけでなく経験を知識として整理し、AIに学習させることが重要である。
さらに水防蓋の設計がはじめての場合もある。 その場合は、閉止フランジの規格を参照するとか、リブの入ったトラック用の連絡橋を参照するとよいかも知れない。
設計者が取材した情報は、AIに学習させるために整理し、知識として学習させることで、より良い設計ができるようになる。
AIに学習させる場合は、OKF形式を参考にする。
ファイル名: 水防蓋の実例.md
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type: actual
title: 水防蓋
description: 水深5mにある800mの取水口はSS400の厚み16mm
resource: /dxf/cover01.dxf
tags: [gate, actual]
timestamp: 2026-05-28T14:30:00Z
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# 仕様
- 用途: 水深5mにある800mの取水口を塞ぐ
- 材質: SS400
- サイズ: 外経: 850mm, M12用ボルト孔 x 8
- 塗装は錆止め(使用後にスクラップ)
# 設置状況
2015年7月に据付。2週間にわたる止水工事のあと撤去。漏洩はあったがパテ等の応急処置で対応できた。
撤去後は損傷等はなく、その後2015年10月の止水工事にても使用したが問題なかった。
これにならって、リブの入ったトラック用の連絡橋.mdを作っておく。閉止フランジの規格.mdもあるとよい。JIS規格とかDIN規格とかひと通り揃っているとよい。(規格品は規格書の原本を見るようにAIに回答させることもできる)
そのあとファイル・フォルダを整理する要領で、知識の整理を行なう。AIに学習させる迄に、このプロセスに時間がかかる。
design-knowledge/
├── index.md
├── actuals/
│ ├── index.md
│ ├── 水防蓋の実例.md
│ └── リブの入ったトラック用の連絡橋.md
├── regulations/
│ ├── index.md
│ ├── 閉止フランジの規格JIS.md
│ └── 閉止フランジの規格DIN.md
└── inspections/
│ ├── index.md
└── ○○の試験結果.md
└── experiments/
│ ├── index.md
└── ○○の実験結果.md
Note
index.mdについて
水防蓋の実例.mdを直接開いたり、フォルダを直接たどったりするのは少し疲れる。
できればWEB共有して意見交換しながら知識の追加・修正を行っていきたい。
そのときindex.mdがあるとdesign-knowledge/をそのままWEBでみることができたりする。
(本題からはそれるので一旦気にしなくてもよい)
[補足] このサイトでは、船舶、航空機、ドックゲートの章になっているので、次のような整理も考えられる。 船舶設計のために、航空機の設計を参照したり、またその逆を行なうことを想定している。
design-knowledge/
├── index.md
├── vessels/
│ ├── index.md
│ ├── catamalan-01.md
│ ├── catamalan-01.md
│ └── リブの入ったトラック用の連絡橋.md
├── aircraft/
│ ├── index.md
│ ├── 閉止フランジの規格JIS.md
│ └── 閉止フランジの規格DIN.md
└── dockgate/
│ ├── index.md
└── ○○の試験結果.md
学習¶
知識が整理されたら、AIに学習させる。学習には次のような方法がある。
a. LLMモデル自体を設計支援エージェントとしてチューニング b. データベースから知識を取り出して回答 c. OKF形式ファイルを質問の都度参照して回答
a.はコンテキストサイズが小さいLLMを使う場合は、LLMモデル自体をチューニングすることで回答精度が向上する。 規格や法基準等の一般的な知識の学習に向いていると考える。
b.とc.は、一般的な知識とは別に設計者の知識を学習させる方法である。 手っ取り早いのはcである。フォルダやファイルの操作や編集は誰でもできる。 cで気をつける点としては、知識やノウハウが設計者個人のパソコンでのみ使用されることである。 知識は広く共有され精錬される必要があるため、構築に少し専門的な技術が必要となるがbが望ましい。
具体的な学習の手順やデータベース連携等は付録で解説する。
AIの応答の判定¶
AIは確率的な推論によって回答を生成するので、毎回答えが違っていたり、ややいびつな理屈を述べる可能性もある。 一方で、設計自体も推論であり、設計が正しかったかどうかはものが完成してからでないとわからない。
そのため、AIとの対話では、AIに性能を厳しく評価するよりも、そういう考えもあるかもしれない位の気づきが得られる点を評価するほうがよい。そのなかで、どうも話しが噛み合わないなってところが出てきたら、知識を少し見直してみる。
必ず言われることだが、人間が最終的には責任をもって判断しなければならない。
AIを使うと判断材料が効率的に得られ、また判断が正しいかどうかの試行を何度も行なうことができるので、うまく活用すれば、良い判断を行なうことができる。
まとめ¶
3Dプリントのためのモデリングがが、本書のテーマであるが、3Dモデリングだけでなく本当のものが作りたいという欲は出てくるだろう。3D CADシステムを覚えるだけでもひと仕事なので、AIを効果的に活用したい。3Dモデリングを通じて設計観点での課題や解決策があれば、それを知識として蓄積し活用することで、リアルな製品の実現が期待できる。